コンテンツ・テキストデザイナー
安達 剛士
北欧インテリアショップに10年以上勤務し、鳥取、東京で約8年間店長を経験。北欧の暮らしにある本質的な豊かさに魅了され、自分らしさを楽しめる暮らし、コーディネートを多数手掛けた。
2022年より故郷の鳥取に戻り有限会社フォーリア・インテリア事業部を設立。インテリアコーディネーター資格を持ち、空間ディレクションの他、暮らしを楽しむ発信を行うなど広くインテリアに携わる。
2児の父でありながら、子どものように好奇心旺盛なインテリア愛好家。
製品化へのあくなきこだわり
1616/arita japanには、ものづくりへの深い想いを感じます。素材選定からデザインのディテール、製品のクオリティ、機能性、耐久性までいたるところに徹底したこだわりを見ることができます。例としてそれを物語るのがデンマーク人デザイナー、セシリエ・マンツによるデザイン、CMA“Clay”シリーズの開発秘話です。
1616/arita japanのものづくりは、デザイナーが考える世界観を存分に発揮してもらうために、メーカーからの細かなリクエストは行わないというのが基本スタンスです。そんな環境下で、構想から実現まで3年を費やしたCMA“Clay”には、彼女の強烈な感性が表れました。
何百枚ものスケッチ、数多の陶土の中から素材を選び進められたものづくりの過程は、そのフォルムの精度も0.5mm単位までこだわるという徹底ぶり。(製品化にあたって0.5mmは現実的に難しかったが、1~1.5mmの誤差までを許容としているほどの緻密さ。)また、他では使われることが稀なアースグレーの陶土を採用した素材も、土が本来持つ自然な表情として独特な味わいを見せます。妥協を許さない数々のこだわりが、他では真似できない精度とクオリティを生んでいるのです。
心地よさをつくる器
2022年1月に発表された「CMA“Clay”collection」は、“世界中のキッチンに似合う”をコンセプトに、食事を楽しむだけでなく、その空間で過ごす「気分」を満たしてくれるコレクションです。フリッツ・ハンセン、フレデリシアファニチャー、ホルムガードなど、世界的なインテリアブランドで数々の名作デザインを生みだしてきたセシリエ・マンツは、彼女らしいアプローチで有田焼へ新しい風を吹き込みました。
食卓に並ぶシンプルな器は色とりどりの料理と合わせて楽しむことができ、食器棚の中で整然とスタッキングされる姿は食器たちのOFFの表情も美しく見せてくれます。フラット、ディープ、ロー、トールの4つの要素で構成される食器が、重ねて魅せる収納としての楽しみも最大限に引き出してくれます。
一般的に流通するサイズに捉われない、間を埋めるようなサイズ感でもあえて展開するのは、彼女がリアルに思い描く使い勝手を意識した日常の表れです。そして、ひと目で惹かれる柔らかさを感じるフォルムにもまた、女性目線での徹底したこだわりを感じます。
空間に彩りとゆとりある時間を
「キッチンに似合う」は単に食器だけを意味しません。CMA“clay”シリーズは、キッチン空間を彩るインテリアも展開しています。例えば、北欧では食卓でキャンドルを灯すことが日常的な光景です。そんな空間に自然と溶け込むキャンドルホルダー。また、食卓には季節のお花も飾られます。そこに合わせるのは装飾性を一才許さないシンプルなフラワーベース。キッチンやダイニングを囲むアイテムもシリーズとして揃えることで調和が図られ、そこに落ち着きある空間が生まれるのです。
想いを込めて
陶芸家の両親のもとに生まれ、幼少期を有田の町で過ごしたことのあるセシリエ・マンツ。そんな幼き日の記憶が宿る有田と、デザイナーとなって再び会う有田。きっとさまざまな想いが込み上げたことでしょう。過去があるからこそ感じることのできるそんな想いは、「有田焼」という伝統を受け継ぎながら新たな道へと舵を取ったブランドとの出会いによって導かれた想いといえます。
1616/arita japanの根底にある、伝統を紐解き、新しい感性と融合させたものづくり。私たち使い手は、そんな背景の込められた器を手にし、日常を送ることで、そこに目に見えない価値が生まれることに気づきます。それが、この先受け継がれていく「どうぐ」のはじまりとなるのです。