コンテンツ・テキストデザイナー 安達 剛士
1982年、鳥取県生まれ。
北欧インテリアショップに10年以上勤務し、鳥取、東京で約8年間店長を経験。北欧の暮らしにある本質的な豊かさに魅了され、自分らしさを楽しめる暮らし、コーディネートを多数手掛けた。
2022年より故郷の鳥取に戻り有限会社フォーリア・インテリア事業部を設立。インテリアコーディネーター資格を持ち、空間ディレクションの他、暮らしを楽しむ発信を行うなど広くインテリアに携わる。
2児の父でありながら、子どものように好奇心旺盛なインテリア愛好家。
時代を牽引するブランド〈フリッツ・ハンセン〉
150年の歴史を持ち、世界に広くその名を知られるインテリアブランド〈フリッツ・ハンセン〉。洗練されたプロダクトの佇まいは一瞬のうちに強いインパクトを残し、そこに圧倒的な世界観をつくり出します。北欧・デンマークに誕生し、数々の著名なデザイナーとともに時代を切り拓いてきた〈フリッツ・ハンセン〉は、家具、照明、アクセサリー小物、またアウトドアまで幅広いデザインを発信し、業界のグローバルリーダーとして走り続けています。その背景には何があるのか。過去から今に繋がるいくつかのポイントに注目しながらご紹介します。
ブランドの拡大へと繋がった先見性
1872年、25歳の腕利き家具職人だったフリッツ・ハンセンは、故郷のナクスコウから首都コペンハーゲンへと移り住みます。他国との貿易が可能となる通商権を得た彼は、1885年に家具製造会社を設立。2年後には、コペンハーゲンの中心街クリスチャンハウンに工房も立ち上げました。1899年に父フリッツ・ハンセンから事業を受け継いだ息子クリスチャン E.ハンセンも、父と同様に先見の明を持つ人物であり、その後も新たな挑戦を重ねていきます。
新たな時代をつくる製品開発
〈フリッツ・ハンセン〉は、1920年代に当時最先端だったスチーム曲げ木技術を確立。さらに1930年代にはそのレベルを引き上げ、後にブランドの代名詞ともなった成形合板家具の開発も、その技術の先にあった大きな成功でした。同じく1930年代、〈フリッツ・ハンセン〉はデンマーク初のスチール製家具を発表しました。ブランドの主要な家具に見られる美しく軽量感あるスチールのシンプルなフォルム、そこから生まれる高い機能性は、当時のデンマークモダン家具に新たな一石を投じ、今では北欧家具を語る上で欠かせない顔となっています。
さらなる規模の拡張へ
1940年代、世の中は第二次世界大戦による物資不足。そんな中、〈フリッツ・ハンセン〉は厳冬によって枯れてしまったウォルナットを大量購入し、その家具シリーズの発売に踏み切るなど独自性に富んだ施策は世間の注目を集めました。それによって工場の規模も拡張していくこととなります。果敢なチャレンジを続ける姿勢は、その後も変わることがありません。それが時代を牽引するリーダーたる所以といえるでしょう。
そして、〈フリッツ・ハンセン〉にとって、デザイナーや建築家など世界屈指の先駆者たちとのコラボレーションもまた特筆すべき歴史です。そんなお話は中編へと続きます。
