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2024.09.05 THU

ブランド紹介 〜Vitra(ヴィトラ)〜

ブランド紹介 〜Vitra(ヴィトラ)〜

コンテンツ・テキストデザイナー 安達 剛士

1982年、鳥取県生まれ。
北欧インテリアショップに10年以上勤務し、鳥取、東京で約8年間店長を経験。北欧の暮らしにある本質的な豊かさに魅了され、自分らしさを楽しめる暮らし、コーディネートを多数手掛けた。
2022年より故郷の鳥取に戻り有限会社フォーリア・インテリア事業部を設立。インテリアコーディネーター資格を持ち、空間ディレクションの他、暮らしを楽しむ発信を行うなど広くインテリアに携わる。
2児の父でありながら、子どものように好奇心旺盛なインテリア愛好家。

時代を牽引するヴィトラが生み出す多彩なプロダクト

暮らし方、働き方が目まぐるしく変化する中で、その舞台となる空間もまたその変化にあわせてアップデートされなければなりません。家具や道具のデザイン・機能性は、暮らしや仕事の質に大きく影響します。スイスの家具メーカーであるヴィトラも「ホーム、オフィスなど、あらゆる環境が人々の思考や感情をかたちづくる」と謳い、彼らのプロダクトは時代を越えて世界中で愛されています。「革新性」、「クラシック」、「親しみやすさ」、そんな多彩な魅力を持つプロダクトにも、その想いが表れています。

世代を越えて進化を遂げるヴィトラ

ブランドの設立は1950年。もともとスイスのバーゼルで店舗什器メーカーを営んでいたウィリー・フェルバウムとエリカ・フェルバウムは、その年、事業拡大のためスイスに程近いドイツ国境の町 ヴァイル・アム・ラインに〈ヴィトラ〉を設立しました。そして3年後に訪れた大きな転機。アメリカで旅をする中で当時活躍中のチャールズ&レイ・イームズの家具の魅力に触れ、事業の中心を家具製造へとシフトすることを決断します。そんなアグレッシブな姿勢によって、その後も次々と新しい時代を切り拓いていったのです。

ヴィトラは、3世代に渡って受け継がれているブランドです。1977年、経営はウィリーとエリカの息子ロルフとレイモンドへ、2012年には3世代目にあたるノラへと引き継がれ、今に至ります。そんな歴史を通してヴィトラは積極的に変化を起こし、発展してきたブランドといえます。2013年には、フィンランド発のインテリアブランド〈Artek/アルテック〉もそのグループに加わりました。また、ヴィトラに関わるデザインには、新旧問わず枠にとらわれないグローバルなデザイナーや建築家たちの存在も印象的です。

独自の世界観から生み出されるデザイン

イームズ夫妻のプロダクトをヨーロッパ、中東で販売するところから始まった家具メーカーとしての歴史ですが、1968年にヴィトラ初のオリジナル家具として発売した「パントンチェア」は新たな時代を印象づけ、その後も数々のデザイナーやその家族との信頼関係のもと、“本物の”製品を生み出し続けてきました。1980〜90年代からの新鋭デザイナーとの協働では新しいオフィスの考え方を世に広め、2004年に発表したホームコレクションでは最先端のデザインとかつての名作デザインが彩る空間を実現しました。

そんなヴィトラのプロダクトにおいて、2008年から採用されている「Vitra Colour & Material Library」は特筆すべきポイントです。それは、膨大な「カラー」や「素材」の情報を体系的に組み合わせることのできるシステムであり、協働するデザイナーごとにそれぞれの魅力を引き出すカラーパレットも存在します。これによって、オフィス、住宅、公共施設など一つ一つの空間にフィットする、より特色ある世界観が表現されます。ヴィトラ製品のカラー、素材のディレクションを務めるオランダ人デザイナー、ヘラ・ヨンゲリウスと協働で生み出したこのシステムは、テクスチャー選びの基盤となっています。

自らがブランドの想いを体現するスタッフたち

1989年にフランク・ゲーリーが設計を手掛けた「ヴィトラ デザインミュージアム」をはじめ、数々の世界的な建築家とのコラボレーションで生まれた施設が連なる「ヴィトラ キャンパス」。この文化的な取り組みは、デザインや建築が果たす役割への理解を深めるとともに、インスピレーションを与えます。その指針は、広い意味での来訪者だけではなく、ヴィトラで働くスタッフにも向けられています。ヴィトラが長く成功を収め続けるには、スタッフ自身がヴィトラの一員であることに誇りを持ち、その価値観を共有することが重要と考えているからです。

またヴィトラは、世界各地にオフィスを構えるグローバルな企業です。そこで働く人材をひとつのグローバルな“家族”と捉え、世界中の同僚との交流を通してのイノベーションを推進し、国境を越えた文化的な平等を実現しています。また、“充実した仕事”と“健康”に深い関係があると考え、スタッフの運動や栄養のサポートも行われています。ヴィトラのオフィシャルサイトにはこのような言葉があります。

「言うまでもなく、マインドフルネスと運動は、日々の生活のストレスや不安に対処するための最良の戦略の1つです。」

そんな企業としてのあり方は、私たちにとっての働き方にも、広く当てはまる指針ともいえるのではないでしょうか。

時代の変化とともに前進する先にあるものとは

ヴィトラは、インテリアブランドとしての商業的な側面、またデザインの本質を広める文化的な側面だけでなく、環境保護への取り組みにもまた重きを置いています。例えば、自社のスタッフに対し、通勤や移動に電気自動車や充電ステーションを整備しているのもその一環です。また2020年には、リサイクルプラスチックを採用した初の製品を発売しました。これは、製品開発、材料調達、製造、サプライチェーンを通して環境へ配慮した組織化の実例です。その他、コルクやレザーの端材なども持続可能な素材としてヴィトラ製品に採用されています。

家庭廃棄物から再生した素材を使って製品化された「ティプトンRE」

世界の各ブランドが“サステナビリティ”の方針を掲げる昨今、それを実現する一つの方法として、“長く使える製品”の開発に力が入れられています。もちろんそれは、ヴィトラのプロダクトにも当てはまります。ただ、常に新たな課題と向き合うヴィトラの描くビジョンには、この先もアップデートされていく私たちの暮らしも映っていることでしょう。そんな中で生まれる製品が、私たちの過ごす空間に創造性と心地良さを運んでくれます。

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fremtiden

「Fremtiden」はデンマーク語で
「未来へ」を意味する言葉。
私たちの決意と願いを込めて名付けました。

携わるすべての人たちが心豊かに過ごすために
「過去〜今〜未来」への道のりを
美しいところも、今起きている課題も
すべて正直に、皆等しく伝えます。

お店を通して、育てる人、作る人、使う人
みな理解し合い
ものにまつわるすべてを、
大切に丁寧に愛着をもって作り
使い、育て、次の世代へ
繋げていくことを願っています。

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