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2024.11.07 THU

ブランド紹介 〜Fredericia(フレデリシアファニチャー)〜

ブランド紹介 〜Fredericia(フレデリシアファニチャー)〜

コンテンツ・テキストデザイナー 安達 剛士

1982年、鳥取県生まれ。
北欧インテリアショップに10年以上勤務し、鳥取、東京で約8年間店長を経験。北欧の暮らしにある本質的な豊かさに魅了され、自分らしさを楽しめる暮らし、コーディネートを多数手掛けた。
2022年より故郷の鳥取に戻り有限会社フォーリア・インテリア事業部を設立。インテリアコーディネーター資格を持ち、空間ディレクションの他、暮らしを楽しむ発信を行うなど広くインテリアに携わる。
2児の父でありながら、子どものように好奇心旺盛なインテリア愛好家。

卓越した品質を守り続けるフレデリシアファニチャー

ボーエ・モーエンセン、ハンス J.ウェグナー、ナナ・ディッツェルといったデンマークを代表するデザイナーの作品が並ぶインテリアブランド「Fredericia(フレデリシア ファニチャー)」。そんな不朽の名作に抱く、上質で洗練されたイメージは、現代のデザイナーとのコラボレーションによる作品にも共通して感じ取ることができます。そこにあったのは、100年以上もの歴史を持つブランドだからこその伝統と、目指すべきブランド像を追求し続ける熱い想い。その背景を紐解いていきます。

ボーエ・モーエンセンと自邸のためにデザインした「model2213」ソファ

デンマーク老舗ブランドの発展の歴史

1911年にユトランド半島東岸の町・フレデリシアに創業した当時の社名は、「Fredericia Stolefabrik (Fredericia Chair Factory)」。フレデリシアの町は、1913年から長く国際的な家具見本市が開催されたことでも有名です。フレデリシアチェアファクトリーは、当初からクラシックなソファや椅子などのクッション張りにおける高い職人技術で知られていました。また、1930年代にはトーネットの工場から製造ライセンスを受け、そのノウハウによって更なる成功を収めました。しかし1930年代後半、創業者のN.P.ラウンスがこの世を去って以降、業績は下降線を辿っていくこととなります。

高い技術力を持った職人たち

転機が訪れたのは1955年、実業家のアンドレアス・グラヴァーセンがフレデリシアチェアファクトリーを買収したことに始まります。デザイナーとしてボーエ・モーエンセンを迎え入れ、その強力タッグにより業績は回復。その後もフレデリシアチェアファクトリーは、数々のデザイナーとともに名作を世に誕生させました。

アンドレアス・グラヴァーセン(左)とボーエ・モーエンセン(右)

1989年にメインデザイナーに就任したナナ・ディッツェル。その協働を推し進めたのは、アンドレアス・グラヴァーセンの息子であるトーマス・グラヴァーセンでした。ここでも大きな成功を手にした同社は、1995年に経営を父から子へと引き継ぎ、それと同時に、「フレデリシア ファニチャー」へと社名も変えます。2020年にはエリック・ヨルゲンセン社を買収したことにより、デザインアーカイブの拡大と両者の強みを一つにした製品開発が可能となりました。こうした動きからも、常に発展を目指す企業理念を窺うことができます。2024年5月からは、アンドレアス・グラヴァーセンの孫にあたるラスムス・グラヴァーセンが3代目のCEOへ就任し、ブランドはまた新たな世代へと引き継がれています。

ブランドは、トーマス・グラヴァーセン(右)からラスムス・グラヴァーセン(中央)へと引き継がれた

ブランドの進化を加速させたデザイナーとの協働

フレデリシアファニチャーの歴史を語る上で、ボーエ・モーエンセンとナナ・ディッツェルという2人のデザイナーの存在は欠かせません。時代を違えてそれぞれにブランドの成長を牽引した人物ですが、そこに伝統の高い品質と先進的な挑戦が重なることで、名作は誕生していったのです。実はアンドレアス・グラヴァーセンがフレデリシアチェアファクトリーを買収するにあたって出した条件が、ボーエ・モーエンセンを唯一のデザイナーに据えることだったといいます。その絶対的な信頼が、一般庶民へ向けたリーズナブルで良質な家具をデザインしてきたモーエンセンを新たな挑戦へと導きました。
(→『デザインに生きた人々の物語 Vo.4 デザイナーと協力者たち〈前編〉』)

ボーエ・モーエンセンとの協働で生まれた「スパニッシュチェア」

1993年にナナ・ディッツェルがデザインした名作「トリニダードチェア」もまた、先進的な取り組みから生まれました。成形合板に細いスリットを入れるという工程は当時最新の技であり、その実現がデザイナーとブランドに確固たる地位をもたらしたのです。一方で、スペース・コペンハーゲン、セシリエ・マンツ、ジャスパー・モリソンといった現代のデザイナーによるプロダクトも、クラシックでありモダンでもあるブランドの顔となっています。フレデリシアファニチャーは、時代の流れに合わせて進化を続けているのです。

ナナ・ディッツェルと代表作「トリニダードチェア」
気鋭のデザインデュオ「スペース・コペンハーゲン」 

受け継がれる技術力の高さと積み重ねられる知識

フレデリシアファニチャー製品の高い品質は、伝統の職人技術だけでなく、デザインに関する深い知識によっても支えられています。デザイナーとの密接な関係の中で長年培われてきた、誠実なデザイン、芸術的表現、素材や業界における豊富な知識が、ブランドとしての創造的な風土の礎となっています。

フレデリシアの土地に生産拠点を構えたのが1911年。そのフレデリシアに加え、スベンボーにも設けられた生産施設。その2つの拠点で働く献身的で熟練した知識を持つ専門家の存在が、フレデリシアファニチャーにとって重要な役割を果たしています。その知識と情熱から生まれるものづくりにとって大切なキーワードがあります。一つは「高品質」、そしてもう一つが「持続可能性」です。

持続可能なものづくりによって導かれる暮らし

フレデリシアファニチャーにとって「持続可能性」とは、「家具の開発と生産において、伝統と責任を真剣に受け止めること」だといいます。

かつてアンドレアス・グラヴァーセンはこんな言葉を残しています。

「私たちは、デザインとビジネスの両方において、明快さ、良質な素材、人間的な共感、そして何よりも強さを追求しています。

私たちが購入し、一緒に暮らすものは、変える必要はなく、むしろ尊厳と魅力を持って古くなることが非常に重要です。」

その価値観を実際の動きで示しているのが、 B Corp 認証[i]の取得です。持続可能な社会へ向けての取り組みが、ビジネスを単純な利益に留めず、製品の作り手・使い手、地域社会や地球環境へも良い影響をもたらすと信じています。

安全で、安心して長く使うことのできるプロダクトを生み出すことは、その最適解といえます。フレデリシアファニチャーが、市場で最も良質とされるレザー(革)や最高級木材を使用するのもそのためです。財産とも言える専門知識を基にした素材選びも、持続可能な製品開発において重要なポイントです。

例えば、ドイツ、スウェーデン、デンマークを中心とした健康な家畜から供給される、品質の保証されたレザーを厳選する上、アレルギー物質を含まない「オーガニックレザー」を新たに導入しているのもその一つ。また、EUTR または FSC ®認証の管理された森林から調達できる木材にこだわり、2025 年末までに木製家具の 100% を FSC 認証にするという目標も掲げています。いずれも持続可能な資源です。

現在のフレデリシアファニチャーが、“製品を世に生み出す責任”と徹底して向き合う裏には、歴史と伝統の蓄積から得た知識や新たなチャレンジをし続ける企業の姿がありました。そんなバックグラウンドを知ると、ひとつひとつのプロダクトが一層輝いて見えてきます。


[i]  B Corp(B Corpolation) 認証・・・2006年に米国で設立された非営利団体NPO団体「B Lab」が実施する国際認証制度。社会や環境への配慮など、公益性の高さを認められた企業に認証ラベルが付与される。

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fremtiden

「Fremtiden」はデンマーク語で
「未来へ」を意味する言葉。
私たちの決意と願いを込めて名付けました。

携わるすべての人たちが心豊かに過ごすために
「過去〜今〜未来」への道のりを
美しいところも、今起きている課題も
すべて正直に、皆等しく伝えます。

お店を通して、育てる人、作る人、使う人
みな理解し合い
ものにまつわるすべてを、
大切に丁寧に愛着をもって作り
使い、育て、次の世代へ
繋げていくことを願っています。

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